第1回 水圏環境工学研究室 豆知識
- 9jousui
- 3月2日
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🌧 雨はどうやって降るのか?
(降水のしくみと、私たちの暮らしとの深いつながり)
☔ 「なぜ雨が降るのか」を説明できますか? 雲ができて、雨が降る——当たり前のように見えるこの現象には、驚くほど精緻な物理法則が働いています。 |
🌊 水循環の中の「降水」
地球上の水は常に循環しています。海・湖・川・土壌から蒸発した水蒸気が大気中に上昇し、冷やされて雲となり、やがて雨や雪として地表に戻ってくる——これが「水文循環(すいもんじゅんかん)」です。
地球全体で1年間に降る降水量は約577,000 km³(= 約5770億トン!)にのぼります。そのうち約39万km³が陸地に降り、残りは海に降っています(Trenberth et al., 2007)。
📊 📊 日本の年平均降水量は約1,700 mm で、世界平均(約880 mm)の約2倍。山地が多く湿潤な気候をもつ日本は、世界でも有数の「雨の多い国」です(国土交通省, 2023)。 |
☁️ 雲ができるメカニズム
雨が降るには、まず雲ができなければなりません。大気中の水蒸気は、気温が下がって「露点温度(ろてんおんど)」以下になると、空気中のちりや花粉などの微粒子(凝結核:ぎょうけつかく)を核として水滴に変わります。これを「凝結(ぎょうけつ)」といいます。
この無数の小さな水滴の集まりが「雲」です。雲粒1つの直径は約0.01〜0.1 mm と非常に小さく、空気の上昇気流によって浮かんでいます。
上昇のしくみ | 説明 |
対流性上昇 | 地面が太陽熱で暖められ、暖かい空気が上昇する(積乱雲の原因) |
前線性上昇 | 暖気と寒気がぶつかり、暖気が寒気の上に乗り上げる(梅雨前線など) |
地形性上昇 | 風が山にぶつかり、斜面に沿って強制的に上昇する(山沿いの多雨) |
収束性上昇 | 低気圧付近で風が集まり、行き場を失って上昇する |
🌧 雲粒が「雨粒」になるまで
雲粒はそのままでは雨になりません。雨粒(直径2〜5 mm)は雲粒(0.01 mm)の約100万倍の体積があります。雲粒が雨粒に成長するしくみは主に2つです。
① 衝突・併合過程(暖かい雨):大きさの異なる雲粒が落下速度の違いによって衝突・合体を繰り返し、大きな雨粒に成長します。熱帯や夏の積乱雲でよく起きます。
② 氷晶過程(冷たい雨):雲の上部が氷点下になると、氷の結晶(氷晶:ひょうしょう)ができます。氷晶は水滴より飽和水蒸気圧が低いため、周囲の水滴から水蒸気を奪って急速に成長します(ベルジェロン過程)。日本の雨の多くはこの経路で生まれます。
💧 日本で観測された最大雨粒の直径は約8 mm(気象研究所)。それより大きくなると空気抵抗で分裂してしまいます。 |
⚠️ 豪雨はなぜ増えているのか?
近年、日本では「1時間に50 mm以上」の非常に激しい雨の発生回数が増加しています。気象庁の統計では、1976年〜1985年の平均に比べて2014年〜2023年の平均は約1.4倍に増加しています(気象庁, 2024)。
その背景には地球温暖化があります。気温が1℃上昇すると、大気が保持できる水蒸気量(飽和水蒸気量)は約7%増加します(クラウジウス=クラペイロンの式)。水蒸気が豊富になると、積乱雲が発達しやすくなり、短時間に集中した豪雨が起きやすくなります。
参考文献
[1] Trenberth, K. E., et al. (2007). Estimates of the global water budget and its annual cycle using observational and model data. Journal of Hydrometeorology, 8(4), 758-769.
[2] 気象庁 (2024). 大雨や猛暑日など(極端な気象)の長期変化傾向. 気象庁ウェブサイト. https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tok候/tornadoll.html
[3] 国土交通省 水管理・国土保全局 (2023). 日本の水資源の現況. 国土交通省.
[4] 松尾敬世 (2014). 『雲のしくみ』. 日本気象協会.
[5] Bergeron, T. (1935). On the physics of clouds and precipitation. Proc. 5th Assembly U.G.G.I., Lisbon, Vol. 2, 156-178.
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