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第2回 水圏環境工学研究室 豆知識

  • 9jousui
  • 3月5日
  • 読了時間: 6分

💧  渇水とは何か?

そのしくみ・影響・対策、そして今まさに起きていること

📅 2026年3月更新 🏷 水圏豆知識 #渇水  #水資源  #ダム  #気候変動  #水文学

⚠️  2025年夏から2026年春にかけて、日本各地で深刻な渇水が続いています。2026年3月には神奈川県が30年ぶりとなる渇水対策本部を設置。福岡県でも筑後川水系のダム貯水率が1桁台に低下するなど、「水不足」は今まさに現実の問題になっています。


📖  「渇水」とはどういう状態?

「渇水(かっすい)」とは、降水量の不足などにより河川・ダムの水量が著しく減少し、農業・生活・工業などへの水の供給が困難になる状態を指します。日常会話では「水不足」とも呼ばれますが、水文学・行政用語としては「渇水」が正式な表現です。

渇水は「一切雨が降らない状態」ではありません。平年より雨が少ない状態が続いたり、雨は降っても短時間の豪雨で地下に浸透せずに流れ去ってしまったりすることでも発生します。「降り方の偏り」も渇水の大きな原因です。


段階

状況

主な影響

状況注視

ダム貯水率が平年を下回り始める

農業用水の節水要請

渇水対策支部設置

取水制限の準備・関係者協議

農業・工業用水に一部制限

取水制限(第1次〜)

河川からの取水量を制限

農作物への影響が出始める

給水制限(減圧)

水道の水圧を下げる

高層階で水が出にくくなる

断水(時間断水)

最終段階。特定時間帯に供給停止

生活・経済に深刻な影響


🌧  渇水が起きるメカニズム

渇水の発生には複数の水文学的プロセスが絡み合っています。


① 降水量の減少: 少雨・少雪が長期間続くと、河川流量とダム貯水量が徐々に低下します。冬から春にかけては積雪の少なさが春の河川流量に直結します。

② 蒸発散量の増加: 気温が高いと地表・植生からの蒸発散が増え、河川に流れ込む「有効降水量」が減少します。2025年夏の記録的高温はこの効果を最大化しました。

③ 降水の「二極化」: 気候変動の影響で「降るときは豪雨・降らないときは長期少雨」というパターンが強まっています。短時間の豪雨は地下水の涵養(かんよう)に貢献しにくく、ダム貯水量の回復も難しいことがあります。

④ 積雪・融雪パターンの変化: 山岳地帯の積雪は「天然のダム」として機能しますが、温暖化により降雪量の減少と融雪の早期化が進んでいます。春〜夏の河川流量低下に直結します。


🚨  【2025〜2026年】今まさに起きている渇水


🔴  2025年夏の記録的高温・少雨に続き、2025年秋〜2026年冬も太平洋側を中心に異常少雨が継続。日本各地で「二重の渇水」ともいえる異常事態が続いています。


■  2025年夏の渇水(6〜9月)

2025年夏は記録的な高温と7月の少雨が重なり、全国的な渇水となりました。国土交通省は2017年以来8年ぶりとなる渇水対策本部を設置。全国15道府県33か所以上のダムで貯水率が平年・前年を下回り、15水系19河川で取水制限など渇水への特別態勢が敷かれました。

利根川水系(1都5県・約3,194万人の水源)では9月上旬に上流9ダムの合計貯水率が45%まで低下。気象庁は「令和7年夏の記録的な高温と7月の少雨」として異常気象と認定しました。


地域(2025年夏)

状況

東北(14か所)

ダム貯水率が平年・前年比で大幅に低下

中部(4か所)

農業用水を中心に取水制限が実施

中国(7か所)

複数ダムで平年を大幅に下回る

利根川水系

上流9ダム合計貯水率が45%まで低下(9月上旬)

福岡県

筑後川水系で渇水対策支部設置


■  2025年秋〜2026年春の渇水(継続中)

2025年夏の渇水が解消しないまま、2025年秋以降も少雨傾向が続いています。気象庁は関東を中心とした少雨について「30年に一度程度の顕著な少雨」と評価。東京都心では2025年11月〜2026年2月の降水量が平年比24%、千葉では1月に降水量がわずか1.5 mmという「ほぼ無降水」の状態が続きました。


📍 最新状況(2026年3月3日時点)

● 神奈川県:県内4湖(相模湖・津久井湖・宮ケ瀬湖・丹沢湖)の合計貯水率が34%に低下(2001年以来最低水準)。

   →神奈川県が渇水対策本部を1996年以来30年ぶりに設置。

   →東京都への分水量を50%削減(日量 約22万m³→約11万m³)。

   →横浜市・川崎市・横須賀市・神奈川県広域水道企業団も対策本部を設置。

● 福岡県(筑後川水系):主要ダムの貯水率が10%台〜1桁台まで低下。取水制限へ移行。

● 豊川水系(愛知県):1月14日時点でダム等の貯水率が26%。節水対策を強化。

● 中部・近畿・四国・九州地方整備局:渇水対策本部を設置し対応継続中。


🌍  渇水と気候変動のつながり

今回の渇水の背景には、単なる気象の「当たりはずれ」を超えた、気候変動の影響が指摘されています。

▶    日本近海の海面水温は過去100年で約+1.16℃上昇(気象庁)しており、2025年夏の記録的高温と蒸発散の増大を後押しした。

▶    気候変動により降水が「豪雨と無降雨の二極化」が進んでいる。短時間豪雨が多くなる一方で、無降雨期間が長期化しやすくなっている(IPCC, 2021)。

▶    山岳積雪量の長期的減少により、春〜夏期の「天然のダム」機能が弱まっており、夏場の河川流量確保が難しくなっている。


🔑  「渇水」と「豪雨」は真逆の現象に見えますが、どちらも気候変動による「水循環の極端化」の表れです。


🛡  渇水への対策:工学的・社会的アプローチ

渇水被害を減らすための対策は、インフラ整備から個人の行動まで多岐にわたります。


対策の種類

具体例

ダム・貯留施設の整備

ダムの新設・改修による貯水容量の確保。複数水系の連携(例:相模川・酒匂川水系の連携運用)

需要管理

節水機器の普及、水道料金による需要抑制、農業の節水技術(点滴かんがいなど)

水循環の保全

森林の保水機能維持、湿地の保全・再生。緑のインフラが「天然の貯水タンク」として機能

水資源の広域融通

複数の水系・事業者間での水の融通(例:東京都と神奈川県の分水協定)

渇水予測・早期警戒

数値モデルを用いたダム貯水量の将来予測と早期の節水要請

海水淡水化・再生水利用

新たな水資源の確保。渇水リスクの高い地域での補完的利用


🏠  私たちにできること:今すぐ実践できる節水

渇水の際、1人1日10%の節水が地域全体の断水を防ぐ大きな力になります。

▶    シャワーの時間を1分短縮(約12L節約)

▶    歯磨き中・洗い物のすすぎ時に蛇口を閉める(1回あたり約6L節約)

▶    風呂の残り湯を洗濯・掃除に再利用

▶    洗車は水なしワックスシートを活用

▶    水道局・自治体の渇水情報を定期的に確認する


🔗  最新のダム貯水率は国土交通省「川の防災情報」(https://www.river.go.jp/)でリアルタイムに確認できます。


🔬 水圏環境工学からの視点

当研究室では、河川・内湾の水質・水量変動を観測・モデリングすることで渇水時の水環境変化を研究しています。

渇水時には河川流量の減少により、汚染物質の希釈能力が低下し水質が悪化しやすくなります。

また、内湾では流入淡水量が減ることで塩分濃度が上昇し、生態系への影響も生じます。

「渇水」は水量の問題であると同時に、水質・生態系・社会インフラが絡み合う複合的な問題です。


参考文献・情報源

[1] 国土交通省 (2026). 渇水情報総合ポータル. https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizukokudo_mizsei_kassui_portal.html (2026年3月確認)

[2] 日本経済新聞 (2025年8月2日). ダム貯水率、15道府県の33カ所で平年・24年下回る 高温少雨で.

[3] 日本経済新聞 (2026年3月3日). 神奈川県、渇水対策本部を30年ぶり設置 ダム貯水率低下.

[4] 神奈川県企業庁 (2026年3月3日). 神奈川県企業庁渇水対策本部の設置について. https://kanagawa-dam.jp/

[5] 気象庁 (2025). 令和7年夏の記録的な高温と7月の少雨の特徴およびその要因等について.

[6] 気象庁 (2026). 異常気象情報センター:顕著な少雨(関東中心、30年に一度程度).

[7] 国土交通省 関東地方整備局. 渇水の発生状況と頻度. https://www.ktr.mlit.go.jp/

[8] IPCC (2021). Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Cambridge University Press.

[9] 国土交通省 水管理・国土保全局 (2023). 日本の水資源の現況.

[10] 横浜市水道局 (2026年3月3日). 横浜市の水源ダムの貯水率が低下しています. https://www.city.yokohama.lg.jp/

 
 
 

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